TISIセミナー参加報告

 

2007.08 JASIC 秋葉 忠臣

タイは2006年5月にUN/ECE/WP29の1958協定に加盟以来、自動車の認証制度の確立や技術法規の制定など国内の諸制度について整備を進めているところであります。
TISIの分担とされている部品やシステムの技術要件の導入に当たって認証制度の確立などを検討するために題記ワークショップが開催されました。
JASICとしてこのセミナーに招かれ、58年協定下での認証制度のあり方や相互承認実現に向けたインフラ整備などについてプレゼンを行い、TISIでの今後の諸政策について一緒に考える機会を得ました。
JASICはこれまで日本政府を官民でサポートする形でUN/ECE/WP29での活動にも参画してきたし、1958協定下での基準調和や認証の相互承認の実現、拡大についてアジア諸国に協力する形で官民会議を初めとするいろいろな活動を展開してきました。
JASIC設立二十年を機会に今後2015年を目標とした新長期 事業課題を策定して新たな活動に踏み出したところなので それについてもこのセミナーで紹介し、今後のタイも含めた アジアの進む方向性についても課題提示を行いました。
1) セミナー開催日時: 8月23-25日
2) 場所: タイ Montien Hotel Pattaya
3) 主な出席者: タイ産業省、TISI(タイ産業省産業基準局)、DLT(タイ運輸通信省陸上運輸局)、PCD(タイ天然資源環境省公害管理局、TAI(タイ自動車研究所)、TAIA(タイ自動車工業会)、TAPMA(タイ自動車部品工業会)、JAMA(日本自動車工業会)、TUV Rheinland、TUV Sud、JASICなど合計約50名 
4) 会議概要:
・ タイ産業省大臣補佐官Mr.ChakramonやTISI Mr.Pairoj局長などの挨拶のあと、業界代表によるパネルディスカッションではタイの将来の認証制度について現在の問題点を踏まえたいくつかの提言がなされました。
特に国の政策の意明確化、基準作成プロセスに業界の参画が必要であること、ECE基準の採用をベースとすべきこと、基準の国際化の重要性、認証機関の明確化、DLTとTISIの責任分担の明確化などについて非常に率直な意見が提示されました。

・ さらに三つのワーキンググループに分かれて課題別の討議が行われた。私は車両認証を考えるグループ討議にアドバイザーとして出席し、彼らの現状分析、将来への提言をまとめる討議に参加しました。



 
現状分析では
a) 認証制度に関する政策が不明確、
b) 同じ要件に関して複数の基準が存在、
c) 認証取得に時間がかかりすぎる、試験官によって解釈がばらばら、
d) 基準が国際化していない、ECEの改正にどう対応するのか分からない、
e) 試験設備の必要性について議論が必要、などが挙げられた。
議論の結果、グループとしての提言骨子として
a) 車両登録に必要な認証機関はひとつであるべき、
b) ECE基準の採用とその認証の受け入れ、
c) 基準の整理統合、
d) 認証機関の整備と試験官の教育、などが挙げられグループ内でさらに詳細討議を進めることとなりました。

  ・ JASICからは日本のUN/ECE/WP29での活動紹介、JASICの今後の活動について紹介しました。
TUV Rheinlandマレーシア事務所よりEUのWVTA紹介、及びUN/ECEとの関係について紹介、自工会より車両認証制度とECE導入についての考え方を説明しました。
  ・ 会議の最後に三ワーキンググループから
TISIに対する提案が次のようになされました。

a) 環境グループ: TISIはグローバルな基準を使用すべきである(UN/ECEなど)、強制規格は英語でも発行すべき、TISIの責任範囲の明確化を図るべき、電子認証システムを検討すべき、COPの規格としてISO17025やECEで記載されている基準などAlternativeで認めるべきである。

b) 安全グループ: 複数の認証取得義務を一本化すべき、58協定下でのテクニカルサービスで実施したテストレポートを受け入れるべき、COPの検査基準を簡素化すべき、専門家の教育のためにTAIとも協力し教育プログラムを実施すべき、基準作成に当たっては業界の協力を受け入れるべき、WP29で作成されたECE基準のフォローをすべき、基準の解釈にあったっては外部機関の協力も得て明確にすべきだしその内容は公表すべき、輸入・国産で同じ基準を適用すべき、TISIはシステムに対しても(例ECE R13)強制基準を作成、運用すべきである。

  c) 車両認証グループ: ひとつの認証機関で認証を発行することを明確にすべき、TISIとDLT間での重複基準を一本化すべき、認証プロセスをECEを軸に国際化すべき、試験官や試験設備について国家として整備提供すべき、基準の改正などをタイムリーに的確に行える組織作りを目指すべき、自動車メーカー、二輪メーカー、部品メーカーとTISIとの間の協力関係を再構築すべきである。
 
今回の会議を通じて兼ねて懸案であったDLTとTISIとの役割分担などかなり突っ込んだ議論に参加することが出来た。彼らのECE採用についての認識も我々のプレゼンテーション、議論を通じて深めることが出来たと思います。
タイの車両認証制度が国会を通ったあと58協定加盟国としてECEの採択を如何に進めていくのか、相互承認のメリットを享受するための仕組みづくりをどう進めるのかなど今後JASICの果たすべき役割はますます大きくなっていくと感じました。
DLTと同時に基準作成、認証当局としてのTISIとも協力関係を強化していきたい。